オススメ記事

2008年04月15日

大切なのは「センス」でも「知識」でもなく「装熟度」です

スーツの適齢期 (集英社新書 433H)スーツの適齢期 (集英社新書 433H)
片瀬 平太

集英社 2008-03
売り上げランキング : 3243

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 男性のスーツ読本というのは、かの有名な落合正勝氏の 『男の服装術』にせよ、『週間ポスト』で「ファッション はニュースだ!」を連載している中島渉氏の『 スーツの法則』にしても、 だいたい、うんちくと精神論で構成されており、 「服装とは中身である。教養である」というスタンスです。 そのクラシック原理主義とでも言いましょうか、あまりの 説教臭さと小難しい内容に嫌気をさした男性も多いと思うのですが、 そういう男性に向けて登場したのが「大切なのはお金ではなく センスです」というコピーを掲げる『LEON』です。 「センス」という「知識」と対極の概念を中心に据え、 「ちょいワル」「モテ」というキャッチーな言葉を並べ、 「もっと気軽におしゃれを楽しもうぜ」とミドルエイジに 向けて働きかけたのです。

 こうして、「ちょいワル」は社会現象となり、 ミドルエイジの服装術は「中身・品格」VS「外見・軽薄」 という図式になったのですが、そこに新しく、今までには ない「装熟度」という切り口で参戦してきたのが本書 『スーツの適齢期』です。


 著者は片瀬平氏。著書に『ナポリ仕立て―奇跡のスーツ』 がありますが、漫画『王様の仕立て屋』の原案協力・監修に 携わっている人、と紹介したほうが知っている人も多いのでは ないでしょうか。本書はファッションをテーマにしている にも関わらず、「センス」という言葉は一度も出てきません。 「クラシック」についても、歴史を紐解いたり、ミリ単位の厳格な 定義づけをせず、「生命力が強い」という面白い説明の 仕方をしています。「センス」や「クラシック」ではなく、 「装熟度」という著者独特の哲学を説いているのです。

装熟度とは、装いに関する成熟度、つまり、社会の中での 自分の立場を把握し、どう装えば自分も周囲も心地よく 過ごせるかを考え、装いに表現できるかをはかる尺度だ。 昔、TPOという考え方が流行したが、装熟度は、それに加えて、 着手の年齢やパーソナリティーを意識して、その年の あなただからこそできる、華やかな装いをしましょう、 というものである。

知識を蓄えてスノッブな着こなしをしたり、目立ちたい 精神が透けて見える着こなしをするのではなく、社会や 相手のことを考えて、心配りをしましょう、装いにちょっと した手間隙や工夫を加えましょう、場や人に敬意を払いましょう、 というのが「装熟度」です。どちらかといえば、 「中身・品格」派の考えに近いのですが、「知識」より 「心」を重視しているのがその違いでしょうか。 人の心を動かすのは人の心です。自分がファッションを 愉しみながら、いかに周囲も愉しませるか(いかに 独りよがりにならないか)。その点を重視して、 全編書かれています。

第一話 王のいる国いない国

(一)アメリカを忘れろ
(二)ヨーロッパの根を知る
(三)時代を装え

第二話 精神の貴族たれ

(一)ブランド持ちのブランド知らず
(二)ブランドは諸刃の剣

第三話 スーツの適齢期

(一)もう一度、着ることに本気になる
(二)人生の黄金期

第四話 クラシックは古典にあらず

(一)クラシックとはなんぞや
(二)スーツの並と上
(三)クラシックの匙加減

第五話 華やかさと向き合うコツ

(一)華やかさは誰のため?
(二)華やかさの5原則

第六話 ナポリ仕立ての台頭

(一)スーツは威厳から軽さへ
(二)オーバー50世代を今日的に見せる着こなし術

第七話 既製服ーかしこく着て差をつけろ

(一)あなたの服ではなく大勢の服
(二)フィットしてこそオトナ
(三)パターンオーダーという選択肢

第八話 注文服ー年とってうぬぼれられる幸せ

(一)注文服のすごさと落とし穴
(二)失敗しないオーダー3か条

第九話 コンプレックスは魅力

(一)生きる姿勢に魅力が宿る
(二)太っているから格好悪い?NOです!
(三)背が低いから格好悪い?ますますNO!です
(四)髪が薄いから格好悪い?断じてNO!です

第一〇話 小物は雄弁なり

(一)小物は人生の鏡
(二)帽子ー照れるのは一瞬
(三)巻き物に巻かれろ
(四)ポケットチーフーもう1つの自由課題
(五)男の到達点、カフリンクス
(六)手袋でわかる装熟度
(七)ベルトと悩み多きウェスト
(八)ソックスのデリカシー

第一一話 背景こそ究極

(一)お洒落の本末転倒
(二)背景になれ
(三)装いでわかるチャールズの真実
(四)究極のクローゼットを考える

 ナポリ仕立てを中心に、うんちくやハウツーもそれなりに 語られますが、うんちく系のハウツー本よりは、ファッション 自己啓発本に近いと思います。読むとスーツをフルオーダーで 仕立てたくなります(笑)ミドルエイジ向けの本ですが、 なぜ若者はクラシックが似合わないのか、という視点で ミドルエイジを持ち上げるような書き方をしているので、 若い人が読んでも参考になりますよ。年齢が関係ない話も 多いですし。

 余談ですが、『王様の仕立て屋』に関わっているだけあり、 本書にも『王様の仕立て屋』で登場したエピソードがいくつか登場します。 例えば、第九話の「コンプレックスは魅力」のお話。その着こなしが 『王様の仕立て屋』の主人公である、ユウの仕立ての着眼点と同じなのです。7巻のユウVSツインテールちゃんの仕立て対決や、渡辺謙風味に 演出した髪が薄い人の話とか、コンプレックスを逆手の取る着こなしは いろいろ出てきましたよね。他にもいくつかあるので、 『王様の仕立て屋』が好きな方は、本書もきっと楽しめると思います。



ニックネーム dale at 20:43| Comment(6) | TrackBack(0) | 書評・オススメのムック
この記事へのコメント
普通に読み物としても面白そうな本すね
Posted by task at 2008年04月15日 21:32
この本、『シャネル 最強ブランドの秘密』』と同時に購入し、
先に読み終えてました。
(『シャネル〜』ももうすぐ読み終えます)確かに若者でも参考になる内容も多いのだけど、
各章の扉ページ等に描かれてる挿し絵が
いかにもミドルエイジ向け、という感じなんですよねw
Posted by minamimusashi at 2008年04月15日 23:06
ちょうど、今日本屋で見かけて軽く立ち読みしました。
王様の仕立屋に使われていたネタとして、フランスの老舗シャツ店の職人の言葉がありましたね。
スイカップバーテンダーの話で出てきたネタです。
Posted by Turkey at 2008年04月16日 00:13
そういえば一時期パーソナルカラーという考え方がありましたが、あれって年齢とともに少しずつ変わってもいい気もしますね。
実際どうなんだろう。
Posted by p at 2008年04月16日 22:54
色味は変わらないけど、変化はしていくよ!
Posted by at 2008年04月18日 17:13
>taskさんへ

説教臭くないので楽しめますよ^^

>minamimusashiさんへ

ちょっと脱力しているあの挿絵が僕は好きです(笑)

>Turkeyさんへ

そのネタもありましたね^^

>pさんへ

僕は色の専門家ではないので何ともいえませんが、
おそらく変わっていくものだと思います。
Posted by dale at 2008年04月21日 18:25
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのTrackBack URL
http://269g.jp/tb/11894892
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
特選記事

■女性誌について

【俯瞰図】女性ファッション誌の分類(2007),2005年バージョン(出世魚的視点)
【トレンド】話題の「姫ギャル」とは?,「姫ギャル」にモテる「悪羅悪羅系」
【その他】「ゴスロリ」について調べてみた,「かわいい」の定義を考えてみた
【読み方】女性誌がモテに使える5つの理由,男性が女性誌を効率的に読むには

■メンズファッションについて

【俯瞰図】男性ファッション誌と系統の分類2006,図なしの旧バージョン
【トレンド】モテブランド予想2008A/W,モテブランド予想2008S/S
【ブランド】女性ウケ最強ブランドは,オーソドックスを考える,古着のススメ
【読み物】『メンズナックル』のオモシロキャッチフレーズに迫る,チャックテイラーとオールスター

■オシャレと価値観

【俯瞰図】ファッションをめぐる4つの文化圏
【考察】「TPO」より大切なこと,「清潔感」の意味,「お洒落は足元から」を考えてみる
【ネタ】ファッション好きの取扱説明書,お洒落は我慢というけれど
【服オタ】服オタって何?,ダサいと言われる理由
【読み物】異性のためにオシャレしたっていいじゃない,ファッション改造計画は勘弁!

■当サイトでよく売れた本 BEST5 2008年上半期

【1位】ソニアのショッピングマニュアル
【2位】ブランドの達人[改訂版]
【3位】スーツの適齢期
【4位】服は何故音楽を必要とするのか?
【5位】男の価値は「色」で決まる!