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著者はうんちくでおなじみの出石尚三氏。「百科事典」とありますが、 事典形式ではなく、エッセイ集という形をとっており、 『完本ブルージーンズ』のスーツ版と言える内容です。 用語集や年表がつくのも同じですね。文体もいつも通り、 どことなく昭和の香りと男のロマンを感じさせ、 セーターをスェーター、コーディネートをコオディネート、 ブレザーをブレイザー、ツイードをトゥイード、 シャルベをシャルヴェ等と表記するのもいつも通りです。 若本ボイスで脳内再生されるので、普通に、セーター、 コーディネート、ブレザーとかの方がいいのですけど、個人的には(笑)
結局のところ男の服とは、ルールとルール破りとのシーソー・ゲームに よって支えられているのである。ということは男の服のルールを 知らなくては、およそ男の服を着こなす、あるいは男の服を 愉しむといったところまでは辿りつけないわけだ。
と、エピローグにあるように、終始そんなスタイルで書かれていますので、 興味のない方にはたいくつな本だと思います。ルールという名のうんちくと ルールを破った(創った)偉人たちのお話がひたすら続き、 コラムのお題に沿った資料が列挙される形なので、 「な、なんだってー」と気分が上ることは少なく、 「へー」というテンションがひたすら続きますので、 寝る前に読むのに最適です。5分で眠くなると思います(笑)
<目次>
第1章 スーツの文化史
第2章 スーツ・ドレッサー
第3章 スーツを親友にするヒント集
第4章 スーツを巡るおしゃれな小話
第5章 フォーマル・ウェアの愉しみ方
第6章 仕立職人用語辞典
第7章 スーツ用語辞典
第8章 スーツ名言集 終章 対談・戦後のファッション史(石津祥介・畑埜佐武朗)
1章はスーツの原型サックスーツのそのまた原型であるサックコートが 一般化し始めた、1840年代から00年代までのスーツの変遷が語られます。 著者がファッション業界に足を踏み入れた60年代以前のことは、 ほとんど文献から読み解く感じです。例えば、バルザック、モーム、コナンドイル等、 その時代を代表する文豪の小説の中から、人物の服装描写を引いて、 著者が当時のスーツをあれこれ推測するという形で進みます。
これは一九一八年頃の時代背景で、ラリーという名のイギリス 青年の服装描写である。またしてもブルー・サージのラウンジスーツ。 これは単にモームの好みというよりも。実際に一九一〇年代の イギリスで、紺サージが流行ったのであろう。「ラウンジスーツの出世物語」
時代が進むにつれ、小説だけではなく映画の服装にも言及するのですが、 ひたすら文字が続きイラストもないに等しいので、 服飾史や小説を読み漁っている人以外だと話についていくのがしんどいかもしれません。
第2章はスーツ・ドレッサーについて。ウィンザー公、 フレッドアステア、バロン薩摩など10人の洒落者が登場。 氏の著書『男はなぜネクタイを結ぶのか』と同じノリで 偉人たちの洒落者ぶりが語られます。例えば。フレッド アステアについてはこう評しておられます。
フレッド・アステアの着こなしを決定づけているものは、 英国趣味である。ただしそれは料理における隠し味に似て、 強烈すぎることがない。イギリスとアメリカの味がほどよく ミックスされたところに、アステアならではの真骨頂がある。 「フレッドアステア」
他にもベストドレッサーはいると思うのですが、なぜこの10人を選んだのか。 その説明はありませんでした・・・。
第3章はスーツの着こなしコラム。第4章はスーツに関するうんちく コラムです。『男のオシャレ99』に感じとしては近いです。
着こなしについてよく”シック”chicという表現が使われる。 これはもともとは「狡い」という意味が含まれていた。 つまり「狡いほど計算されている」という状態を指しているのだ。 「着こなしの方程式」
「シック」の見方が変わりかねないうんちくです(笑)いじわるな言い方をすれば、 オシャレが好きだけどオシャレに凝っているように思われたくない。 俗物だけど上品で知的に思われたい。そんな自意識が透けて見える 着こなしを「シック」というのかもしれませんね。
グレイ・フランネル・スーツはその濃度によって微妙に印象が違ってくる。 ミディアムグレイを中心として、それよりもダークであるより ライトである方が身分が上なのだ。「成功した男の匂いを漂わせる生地」
素材にも細かいルールや成り立ちがあると。こんな感じで、 明日誰かに話したくなるうんちくがたくさん載っております。 ただ、話すと相手に嫌な顔をされるとは思いますが(笑)
第5章から第7章まではページ数も少なくほとんど資料なので割愛。 第8章のスーツ名言集が面白かったので、そこからいくつか紹介したいと思います。 個人的には、8章が一番楽しめました。含蓄のある名言ばかりです。
愚者ははでやかに装うことはできても、端正に装うことはできない。 ーけだし端正に装うには、然るべき<教養>が要求されるのだ。 「エドワード・ブルワー・リットン」
知識に裏付けられた着こなしってありますよね。 その自信が立ち振る舞いにも現れオシャレに見えると。 だから一概に権威主義、ブランド志向、蘊蓄が悪いとは言えなかったり。 それが自信の裏付けになり態度に現れるので。 スーツは堂々と着た方が映えますし。
上質というのはコーヒーにたとえられます。一度本物を味わってしまうと、 インスタントには戻れなくなるものなのです。「マーガレット・ハウエル」
ダバダー♪というBGMが流れてきそうですが、一度、上質なスーツを知ると、 あまりの快適さにツープライススーツにはなかなか戻れませんよね。 いや、いろんな価格帯のスーツを試し、その違いを楽しむ男性も いるとは思いますが。皆さんは「上質を知る男」ですか? それとも「違いを楽しむ男」ですか?(笑)
女性が初恋を思い出すことがあるように、男性ははじめて着た スーツを憶えている。初恋とスーツ。この2つが実用と 機能を超えて、精神的な価値を持っていることを示すものであろう。 「ニッキー・スミス」
初恋は実らないとよく言われますが、初スーツもたいてい失敗しますよね(笑) 皆さんにもあると思います。そんな甘酸っぱい思い出。 どうしても、初めは、クラシックなおじさまっぽいスーツより、 モードっぽい華やかなスーツに惹かれるものです。
以上。1章から簡単に本書の内容を紹介してみました。 氏のうんちく力で話を膨らませれば、各々の章で新書1冊書くことも 可能だと思うのですが、それをぎゅっと濃縮し、1冊にまとめあげたのが 本書なのかなと読んでいて思いました。労作ですね。4,000円と高いですが、 値段相応の情報は詰まっていると思います。
ただ、「事典」とあるように、基本的には資料の列挙なので、 あまりスーツの着こなしの参考にはならないでしょう(特にスーツビギナー)。 あくまで「スーツ読本」なので。読み物としても、 『服部晋の「洋服の話」




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こんなの毎日着てるからストレスが溜まるんだよね。
いくら女受けが良くてもスーツから解放されたいと思う今日この頃。
本読むの好きなんですけど、ちょっと途中で退屈になったりもしましたし…
僕も最初のスーツは派手に失敗しました。
初めて着て外に出たとき、一番下のボタンも留めてたことも良い思い出です