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2007年07月12日

ピエール・カルダンがライセンスに走った理由

ピエール・カルダン―ファッション・アート・グルメをビジネスにした男

ピエールカルダン.jpg

 本書「 ピエール・カルダン―ファッション・アート・ グルメをビジネスにした男」はピエール・カルダンの 公式伝記本。フレンチドリームを体現した男の一冊です。 私はてっきりフランス人だと思っていたのですが、 イタリア人だったのですね。元の名もピエールではなく ピエトロですし。そのあたりの経緯は本書でご確認を。

 さて。ピエール・カルダンは、今の若い人たちには あまり知られていないのかもしれませんが、 団塊の世代だとほとんどの人が知っているのでは ないでしょうか。

 クリスチャン・ディオールの独立時(ニュールック) からメゾンの一員として参加していたり、 プレタポルテ(既製服)を初めて発表したり、 百貨店を通じての販売や紳士服コレクションの確立を したり、ジャンポール・ゴルチエを発掘したり、 ライセンスビジネスの先駆者だったり、と、 挙げればまだまだありますが、とにかくファッション 好きの間ではピエール・カルダンはあまりにも有名ですし、 業界に与えてきた影響も計り知れないほど。

 そんなピエール・カルダンですが、やはりカルダン といえばライセンスビジネスでしょう。それによって巨万 の富を築き上げ、フレンチドリームを実現したのですから。


 ライセンスとは何か簡単に説明しますと、 海外・国内の企業やデザイナーとの間の契約に 基づいて認められた、ブランドやデザインの使用権、 生産・独占販売権等のことを意味します。要するに、 ピエール・カルダンの名前とそのイメージを使用しても いいよ、というのがライセンスです。

 カルダンはファッション関係はもちろん、カーテン、 シーツ、スリッパ、タオル、自転車など、ありとあらゆる 商品にカルダンのロゴを付けました。結果、カルダンは 巨万の富を手にするのですが、大量生産によってカルダンの ネームバリューは陳腐化し、ブランド力が低下していく ことになるのです。拝金主義は下品などと言われ、 ラグジュアリー感も失うことになるのですが、

「いわしの缶詰(カルダンが手がけるレストラン、マキシムのライセンス品)が下品で、 香水が上品などと誰が決めたのだ」


と言い切るあたり確信犯でしょうね。

 では、自分のネームバリューを地に落としてまで カルダンがしたいことは何だったのでしょうか。

「20世紀のモードの歴史に名を残したデザイナーたちは 装いを通じて、女性の自由解放に貢献した旗手たちでした。 ポール・ポワレはコルセットを取り払い、女性の肉体を 解放しましたし、ココ・シャネルは初めてズボンを 穿かせましたし、短いプリーツスカートも発表しました <中略>今度は私自身が何をもたらすかを考えねば なりませんでした」

 その答えとして、カルダンはファッション界に プレタポルテをもたらし、百貨店を通じての販売や紳 士服コレクションを確立。そしてライセンスビジネスに 乗り出すことになるのですが、これらの共通点は何だと 思います?

「私の意図していたことは一握りの人々が相手ではなくて、 何百万人もの人々のスタイルを変えることだったのです。 もしも、庶民に対する流通経路がないならば贅沢品なんて 何の役に立つのですか。特に、ファッションが社会的に 認知されていない国々ではそれが必要なのです。 それに、なぜ、同じ女性が大金持ちではないという理由 だけで、エレガントになる権利を奪われてしまうのですか」

 もうわかりましたよね。そうです、カルダンはブランド(ファッション)を 大衆化することが狙いだったのです。 どこの国でもそうですが、その社会のファッションを リードするのは必ず上流階級です。何がおしゃれかは 権威者が着用したブランド、服、スタイルで決まります。 一般人は指をくわえてみていることしかできません。 そこに疑問を抱き、お金持ちだけがファッションを楽しむ のはおかしい、とファッションを民主化、つまりお金持ち 以外にもブランド(ファッション)を解放しようとした のがカルダンなのです。

 流行とは大衆から生まれるものであり、流行こそが ファッションの醍醐味です。流行との距離感 (同一化・差異化)を楽しむのがおしゃれです。 もしかしたら、今、私たちがファッションを楽しめる のはカルダンのおかげなのかもしれませんよ。



ニックネーム dale at 19:17| Comment(5) | TrackBack(0) | 書評・オススメのムック
この記事へのコメント
ネットでは往々にしてライセンス物が叩かれていますが、そこまで毛嫌いするのは本当に一握りの服オタだけなんですよね…
ほとんどの人にとってはそのライセンス物もオシャレであって、充分ステータスになりますから

(本当に良い意味で)「ブランドの敷居を下げた」ということは、まさに偉業と言っていいでしょう
自分が今ファッションを楽しんでいることを考えると、尚更です
Posted by ひろゆき at 2007年07月12日 23:13
特に今回の内容は、語り口のうまいブログだなと感心したと共に、嫉妬しました(笑)

スーツの神話でも書かれていましたが、ファッションの民主化というのは必然なのでしょうね。
今ではそれをファストファッションが担っている気がします。
Posted by Alceste at 2007年07月13日 00:01
>ひろゆきさんへ

ファッションをアートと捉えるか(芸術は高価で高尚)、流行と捉えるかの違いでしょうね。一概にどちらが正しいとも言えませんし。ただ、アート一辺倒だった業界に革命を起こしたのは素晴らしいと思います。

>Alcesteさんへ

ファストファッションで今まで以上に民主化が進むと思うのですが、そうなると、ブランドは一線を画すためにより、ラグジュアリー感を増すようになる気がします。本物のセレブに向けて作られた雑誌とかがそういう流れなんでしょうね、

この記事は実は結構、時間がかかりました(笑)

Posted by dale at 2007年07月13日 23:16
「大衆にもモードを」という心意気は理解できますが、もう少しライセンス先のクオリティを保つハードルを設けても良かったのかもしれませんね。
Posted by MONDO at 2007年07月19日 11:28
今まででいちばんいい記事だと思った。
すばらしい。
Posted by 名無し at 2007年07月20日 12:48
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